「甘々と稲妻」「おとなりに銀河」など、複数のメディア化作品で知られる著者の、初期短編集。
柔らかなタッチのイラストと、ハートウォーミングなストーリーが著者の作品の特徴の一つだと思うが、その特徴は初期の作品から一貫されている事が、この短編集からも読み取れるだろう。
数ある著作からあえてこの一冊を選んだのは、今のところ、私が知る限り著者唯一の「百合」作品集だという所が大きい。著者の作品はいわゆる「BL」、男性同士の恋愛を描いたものが多く、女性同士の恋愛を描いた「百合」作品はこの一冊に限られている。
どのようなテーマであれ名作というものは生まれるもので、著者唯一のテーマを取り扱った本作は、初版から11年を経てなお流通が続く、ロングセラーとなっている。このジャンルは寿命が短い作品が多く、特に短編集が10年以上刷りを重ねる事は非常に珍しい。私も先日まだ流通している事を知った時、非常に驚いた。
内容は著者らしく、柔らかな内容。少しほろ苦さもあるが、全体的に読み易い。普段このジャンルに興味がない方にもスムースにお読みいただけるのではないだろうか。
10年以上愛される本作を、是非一度手に取って頂きたい。

(志木店　担当：K)

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