旅行から帰ってきた時、お母さんは必ずこう言う―「やっぱり家がいちばんね」。

果たして本当にそうだろうか？
その台詞が正しいかどうかは、本書を読んでから判断してほしい。神津凛子著『スイート・マイホーム』―近年、ミステリ界隈を騒がしている＜イヤミス＞を、さらに禍々しくアップデートさせた＜オゾミス＞―”おぞましいミステリ”を代表する作家のデビュー作である。

本書は、あなたが＜家＞に対してもっている様々な心温まる属性―ほのぼのとした団らん、セーフティネットとしての機能―そういった印象を、南米の山賊のように、身ぐるみはぎっとていく。気づけば、あなたは荒野に丸裸でほうりだされ、もう二度と、家があなたのゆりかごとはならないことを知るだろう。

オカルト的な怖さなのか、いわゆるヒトコワ系なのか判然としないまま、物語はうねりを巻いて進み、結果的に〇〇に見事に着地する。
そして、もういい加減にしろと頭をはたきたくなるような、あのラスト１ページのカタストロフ。イヤミスの底が抜け、オゾミスが屹立した瞬間だ。

クリスマス、大晦日、正月・・・年末年始の過剰にめでたい気分を、極上の＜オゾミス＞で中和し、ちょうどいい感じにしてみてはいかがでしょうか。

(志木店　スタッフ)

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