街中を歩くとあらゆる行列を目にする。人気店の行列、新商品発売の行列、エスカレーターに乗るための列・・・。そういった行列は人の関心を引き付けるし、何でこんなにも並んでいるのかが気になって仕方ない。日本人特有のものなのか、それとも全人類に共通する心理なのか。
この作品も「列」をテーマに描かれた作品。主人公の「私」はいつのまにか「列」に並んでいて、しかもその列は先が見えず最後尾も見えないという。当然、何の列なのか分からない。分からないまま並び続けるか、列を離れて様子を見に行くか。一度離れてしまうと損をした気がする？どうせ並ぶなら1人でも先に並びたい。列に並んでいる間、人の心は乱れる。何でこの列はなかなか進まないのか、誰かが列の流れを止めてしまっているのではないか？他人を疑い、比較し、自らの正当性を認めさせたいともがきながら「列」に翻弄され生きるむなしさ。人間の持つダークな部分とミステリ要素が融合した哲学的な作品。

(本部　正藤)

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