火事で両親を失った髭もじゃの若棟梁が、身寄りのないお手伝いのりつ、行き場を失った福祉施設の子どもたちと暮らしながら、工務店の再建を誓う。

エイドリアン・トミネやダニエル・クロウズなどのオルタナティヴなグラフィック・ノベルを彷彿とさせる線で描かれた絵は、そのままファイン・アートとして成立しており、集中線や移動線などの漫画的表現は排され、すべてのページに禅的な静けさが湛えられている。

洗練された絵で描かれている一方、内容は意地と人情の泥臭い世界。日常のドラマがあくまでオフビートに描かれるが、登場人物はアツく一生懸命で、ほかの望月漫画と同様、元気をもらうことができる。

また、望月ミネタロウの漫画といえば、靴である。
本作でも、オールスターやＮＩＫＥのワッフルトレーナー、ビーン・ブーツ、オールデンなどの名靴がそこかしこに登場し、それらを鑑賞するのも楽しみのひとつだ。

清涼な作風は、夏に読むのにぴったり。畳の部屋に寝っ転がり、蝉の声をＢＧＭに麦茶でも飲みながら読みたい作品だ。
原作は山本周五郎の短編小説。コチラもぜひ。

（志木店　スタッフ）

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