ファッションを哲学する。そう聞くと、流行に敏感なファッショニスタや頭脳明晰な哲学者以外──つまり大多数の人々には無関係で、とっつきにくいと思われるかもしれません。しかし本書は、「じぶんってなんだろう」「身体ってふしぎだな」と感じたことのあるすべての人が、きっと膝を打つ一冊です。わたしたちは、じぶんの全体像を肉眼で見ることができません。つまり、常に不完全な状態でしか身体を認識できないのです。そんな最も近いようでとても遠いじぶんの身体について、鷲田さんはファッションを通して哲学します。哲学といっても堅苦しくはなく、「なぜ口紅を塗るのか」「ヤンキーの特攻服にはどんな意味があるのか」といった身近な話題ばかり。扱われる話題が身近だからこそ、読んだあとは衣服を、そして身体を見る目ががらっと変わっていることに驚くでしょう。ただ奇抜なだけにしか見えなかったファッションショーも、身体を再定義する知的好奇心にあふれた試みだったと知ることができます。ぜひ本書を通じて、ちぐはぐで愛おしい身体を見つめてみてください。

(ららぽーと甲子園店　スタッフ)