おすすめ書籍
ねこに未来はない
著者:長田弘
税込価格 :528円
ISBN:9784041409022
発売日:1979年1月1日
何やら不穏な感じのタイトルに心がざわつくが、別にピストルズ的ノー・フューチャーな意味ではない。
猫には未来という概念がないという意味で、飼ったことのある人にはわかると思うが、猫は、寝たい時に眠り、食べたい時に食べる。意に沿わないことは一切したくない。どんなに怒られようと、断固、洗面台の中にうんこをし、爪とぎはソファで行う。というような動物で、つまり常に「今」を生きている。
猫をみかけると、かわいいなあと思った次の瞬間、どこかうら寂しい感じが漂うが、それは生来的な刹那性と、それゆえの哀しさに起因している気もする。
このエッセイも、軽く読める気軽さの中に、しんとした悲しみがあり、このように、呑気さと哀愁が矛盾なく同居しているような猫本はちょっとない。
探せばあるかもしれないが(アラーキーの『愛しのチロ』とか)、私はとても好きな1冊で、何度となく読み返している。
本書を読んで、『ハリーとトント』という古いアメリカ映画を思い出した。
マンハッタンに住むおじいさんと猫のトントの、旅先で出会う人々との交流を描いたロードムービーだが、両者は、猫を通して人と人との関わり合いを描いているという点で共通している。どこか突き放した、ドライな感じも似ている。
ともに、全国の犬派にすすめたい。
(志木店 スタッフ)