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オイスター・ブック
著者:M.F.K.フィッシャー
税込価格 :770円
ISBN:9784582762273
発売日:1997年12月1日
ごちそうとは何か。
わたしにとってのごちそうは、何といっても牡蠣である。
「牡蠣」と聞くだけで落ち着かなくなってくる。
オイスター・バーに出かけて行って、ブルー・ポイントを半ダース注文する。ややあって、新鮮でよく冷えたやつが、細かく砕いた氷の上に乗せられて運ばれてくる。それをウェイターからひったくるようにして、両手にそれぞれ一個づつ持ち、つるつると食べる。
火を通すと香ばしくなるし、シングルモルトをソースがわりに振ってもいい。
日本酒で追いかけると、口の中でふわっと香りがひろがり、やがて何もかもがどうでもよくなってくる。
すべるように胃の腑へ落ちていく感覚も気持ちいい。けだし、官能的な食物といえるだろう。
伝統的に魚介の生食をしない欧米でも、牡蠣だけは別で、それだけに特別な食材であり、さまざまな作家や詩人にインスピレーションを与えてきた。
本書は名文で知られるエッセイスト、M・K・フィッシャーが書いた、牡蠣についての本。洒脱な十二葉のイラストとともに、エッセイとレシピが収められている。
軽いタッチの中にも牡蠣への愛情がにじみ出ていて、いかに人びとに親しまれ、愛されてきたかがよくわかる。名文のなせるわざか、味気ないレシピの箇条書きも、まるで詩のように響く。
牡蠣を使ったカクテルやチャウダーなどは家庭でもかんたんに作ることができる。新鮮なブツさえあれば。
という、本棚にあるとちょっといい、とてもかわいい本です。
牡蠣がうまくなるのは寒くなってから。夏のあいだは、これを読んでがまんです。
(志木店 スタッフ)