第110回芥川賞受賞作家。
歴史、ＳＦ、時代小説というように、新刊ごとに作風が大きく変わりますが、多くの作品がミステリ仕立てになっており、読者を虚構と現実のあわいに落とし込むメタ構造をもった小説を得意とする作家です。

その意味では、同じく＜アンチ・ミステリ＞を標榜した『虚無への供物』中井英夫に連なる系譜上にあるといえ、記念碑的な作品『葦と百合』は、竹本健治『匣の中の失楽』につづく＜第五の奇書＞に位置づけることもできるかもしれません。
ジャズ・フルーティストとしての一面もあり、文章もどこかリズミカルで音楽的なのが特徴。『虫樹音楽集』『シューマンの指』等、音楽がモチーフになっている作品も多くあります。また、神秘的な音楽をはじめとして、黙示録的な遺物や猫など、作品世界に共通するガジェットが多く登場し、それらを探すのも楽しみのひとつです。

どれも面白いですが、最初の一冊として、語れば語るほど迷宮に迷いこむバークリー風ミステリ『ノヴァーリスの引用／滝』を挙げておきます。
新刊が出たら、とりあえず買う作家。おすすめです。

(志木店　スタッフ)

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