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リミナルスペース 新しい恐怖の美学
著者:ALT236/著 佐野ゆか/訳
税込価格 :3,740円
ISBN:9784845924004
発売日:2025年9月
昨年もいろいろな本が話題になった。かえりみて印象深いのは、<怖い本>である。
映画化やランキング誌の復刊、雑誌で特集を組まれたり新書で取り上げられたり、さまざまなジャンルでもりあがりをみせ、売上げにも貢献した。
その手の本はぼくも好きで、いろいろ手にとったりしてみたが、怖さの対象もさまざまで、人それぞれに怖さの「つぼ」があるんだなと思った。
ぼくは「永遠的なもの」が怖い。無限に続くもの、終わりがなく(思われる)ものに恐怖を感じる。
幽霊や都市伝説よりも、宇宙空間や数字が怖い。小学生の時に図書室で読んだ『火の鳥』の、永遠に死ぬことのできなくなった男のエピソードが忘れられない。幽霊も、永遠にさまよう、という意味で怖い。出るのは構わないが、自分が幽霊になるのはぜったいにごめんである。すみやかに成仏したい。
『紙葉の家』という小説がある。
来派派のタイポグラフィのような活字組みや、刷れば刷るほど赤字になるといわれている凝りまくった造本など、けっこう話題になった本なので、ご存じの方も多いと思う。
内容も複雑怪奇で、①:「突然、自宅の壁に現れたドアの向こうに無限に続く迷路の探索記録」、②:①の研究、③:②につけた小説ふうの注釈、という三重の入れ子構造になっている。
無限大好きなぼくとしては、この本の①の部分―限りなく続く暗い廊下や階段、大広間を延々と探索するシークエンス―には本当に怖さの「秘孔」を突かれ、読むたびにウットリしてしまう。
この本が好きすぎて、以来、<無限感覚>でトリップできる本を探しているが、なかなか見つからない。
去年の暮れ、『紙葉の家』にも1章を割いて言及していると聞いて、『リミナルスペース 新しい恐怖の詩学』を手にとった。
このような茫漠な空間を「リミナルスペース」というらしい。数多く掲載されている図版から「あの感覚」を味わうことができるし、丁寧な解説からはいろいろ興味の枝が広がりそうで、大事に読み進めている。まさに、目の中に入れても痛くない本である。
(船橋店 スタッフ)

