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卵をめぐる祖父の戦争

著者:デイヴィッド・ベニオフ/著 田口俊樹/訳

税込価格 :990円

ISBN:9784150412487

発売日:2011年12月8日

戦争を考える

第二次大戦が舞台の『同志少女よ、敵を撃て』が本屋大賞を受賞し、話題をよんでいます。
作品背景を知るためのサブ・テキストとして、こちらも新書大賞を受賞した岩波新書『独ソ戦』が当店でもよく売れていますが、同じく独ソ戦を舞台にした小説『卵をめぐる祖父の戦争』もおすすめです。

内容はいたって単純で、ナチス・ドイツ包囲下のレニングラードに暮らしていた少年レフが、上官の命令で、青年兵コーリャを相棒に卵を求めて探索の旅に出る・・・というもの。
独ソ戦は<人類史上最悪の消耗戦>といわれ、数千万人の犠牲者を出した戦争です。そのさなかに、卵を探しに(しかも上官の娘の結婚式のためという超どうでもいい理由で)行くという不条理で皮肉がきいた状況が、ユーモラスに描かれた冒険小説です。

卵といえば、ポール・オースターの『ムーン・パレス』に出てくる、すべてに絶望した主人公が冷蔵庫に残った最後の卵を床に落として泣き崩れるという場面が思い出されます。ここでの卵は最後に残った<希望>でしたが、本書でも同じものを卵に見出すことができます。そこに<生活>や<生命>を見出してもいい。いずれにしろ、卵というもっともありふれていて、もっとも壊れやすいモノが平和のアレゴリーになっていて、戦争の惨禍や愚かさが伝わってきます。

先日、息子が私の父親―つまり彼のおじいちゃん―に「戦争のお話きかせて」と言い、「そんな年じゃねえ」と怒られていましたが、オーラル・ヒストリーとしての戦争体験を伝えることができる語りべは、年々少なくなっています。
そしてフィクションという形式は、絵空事だからこそ、時間の洗礼を経たうえでなお後世に遺る強度をもち得ます。

もちろん小説としてとても面白いですし、あとやはりタイトルが最高ですよね。多くの人に読んでもらいたい小説です。

(志木店 スタッフ)

 

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