おすすめ書籍

奇妙な漢字

著者:杉野幸徳

税込価格 :990円

ISBN:9784591176030

発売日:2023年1月11日

今週のおすすめ本

「金八」で育ったので、漢字には特別な思い入れがある。
本を読んでいても、知らない文字や旧字、異字体などが出てくると、おっ、となる。
漢字に思いを込めるあまり、当て字や訓読を大きく逸脱し、もはや大喜利の域に達してしまった昨今のキラキラネームも大好物だ。
族カルチャーに代表される漢字の多用(「夜露死苦」「仏恥義理」とか)。90年代エヴァ・ブーム。「今年の漢字」。「幽霊文字」を扱った小説、詠坂雄二『5A73』も面白かった。基本的に、日本人は漢字が大好きなんだと思う。

いきおい、漢字に関する雑学の本もよく売れる。
その中からひとつ選ぶならば、本作『奇妙な漢字』をおすすめしたい。ぱらぱら見ただけでも、見た事もない異形の漢字が次々に目に飛び込んできて、自分の語彙のなかに突如闖入してきた見知らぬ奇妙な「形」に、根源的な不安をかきたてられる。

もともと、文字や言語は自然物と人工物の中間みたいな印象がある。その意味で本書は、一種の化け物「図鑑」である、と言えなくもない。
カフカの短編小説に「父の気がかり」というものがあって、そのなかに<オドラデク>という奇妙な生物だか物体だかが出てくるのだが、それに似た気配を感じる。

トリビアルな好奇心を刺激するだけでなく、そこいらの川に釣り糸を垂らしていたら畸形の魚を釣り上げてしまったような、なんともいえない薄気味の悪さにしびれる一冊だ。凡百のホラー小説より、余程怖い。
続刊「奇妙な四字熟語」も最近出ました。コチラもぜひ。

(志木店 スタッフ)

 

オンライン書店「e-hon」で購入!(旭屋書店でも受け取れます)

おすすめ書籍一覧へ戻る