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AMETORA 日本がアメリカンスタイルを救った物語

著者:デーヴィッド・マークス/著 奥田祐士/訳

税込価格 :2,420円

ISBN:9784866470054

発売日:2017年8月18日

今週のおすすめ本

本書『AMETORA』は外国人記者の目から見た日本の服飾史の本。
戦後、日本がみようみまねでアイヴィー・スタイルを取り入れ~定着させ、80sのDCブランド、90sのヴィンテージ・裏原などを経て爛熟し、そして急速に求心力を失っていく現代までをていねいになぞっていく。

読みすすめていくうちに、自分の―というより、おそらく多くの日本男子の個人的服飾史が、その歴史を完璧に踏襲している点がみえてくる。
すなわち、上記の流れになぞらえると、■黎明期:お母さんが西友で買ってくる服からの脱却→■覚醒と葛藤期:見よう見まねでおしゃれ雑誌の真似をしてみたり、キャラにあわず全く似合わないデザインの服(ミルクボーイとか)を買うなどの失敗(アメリカン・トラッドの輸入とジャパナイズ、試行錯誤)→■傀儡期:バイト代をぼったくり値につぎ込む搾取の日々(裏原ブーム)→■円熟期:なんだか面倒になってきて(ファストファッションの台頭)、→■解脱期:スウェットのセットアップ楽で大好き、といった具合。
お前だけだといわれるかもしれなく、甚だ心許ないが、多くの日本男児はこんな感じだろと推察する。

胎児は母胎で魚→ヒトへの進化形態の途を一通りたどるというが、個人の中に大いなる歴史が内包されている。
その意味で、とても腑に落ちるし、自分も歴史の延長線上に立っていることを実感させられる、アクチュアルな歴史書である。
ファッションを通して、日米関係の屈折を透かし見る戦後史の本としても、興味深く読んだ。

世は90年代リヴァイバルだという。
そうだ、次に帰省した時、かつて自室だった部屋の押し入れをあさり、脇がももんがみたいになった<チャンピオン>のリバースウィーブを引っ張り出そう。捨てるに偲びなく置いていったら、いつのまにか老母の家着としてリユースされていた<グッドイナフ>のそこそこレアなTシャツ(グラムg!)を取り戻すのだ。
サイズの入る/入らないはこの際問題ではない。それらをぼくの息子が着る日も近いかもしれない。

2022年はこれと春日武彦『屋根裏に誰かいるんですよ。都市伝説の精神病理』が面白かった。来年はもっとためになる本を読みたい。
おすすめです。

(志木店 大塚)

 

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