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笑ゥせぇるすまん

著者:藤子不二雄A

税込価格 :(1巻)712円

ISBN:(1巻)9784122033665

発売日:(1巻)1999年2月1日

スタッフ一押しのコミック

先日、藤子不二雄A先生が逝去された。
「ハットリくん」や「小池さん」「魔太郎」などの国民的キャラクター、そしてあの偉大な『まんが道』など、たくさんの作品で日本の漫画界を牽引した巨匠である。好きな作品は多いが、ひとつ選ぶとなると、『笑ゥせぇるすまん』が私の心の一作である。

小学生の時、「徳川埋蔵金」を見るために『ギミア・ぶれいく』を見ていたら、突如画面に現れたにやにや笑いの男。それが私と喪黒福造の出会いである。
それは私がはじめてのぞいた大人の世界だった。藤子不二雄といえば「ドラえもん」や「オバQ」しか知らない私は、そのブラックな世界観に脳みそをかき回されるようなショックを受け、ダークヒーローとしての喪黒福造にすっかりしびれてしまった。翌日には書店で漫画を買い求め、アニメはビデオにとり、親にねだって「しゃべる喪黒人形」まで買ってもらった(いまでも実家にある)。

この作品について人と話すとき、「喪黒、ひどいですよね~」などという論調になりがちだが、いわせていただくなら、それは表面的な見方にすぎない。確かに喪黒の顧客たちは、そのダークなホスピタリティによって、私たちの目から見れば不幸になり、しばしば姿形はメタモルフォーズされ、ヒドい目にあわされているように見えるが、彼ら自身は幸福になっているのである。ラストの黒ワクで囲まれたコマの、彼らの表情をみてほしい。そこにはすべてを失った者だけが得られる深い安堵があり、狂気に身を委ねた者の法悦がある。いうなれば、異形の幸せだ(例外もあるが・・・)。

私自身はああいう目に会いたくはないが、私は彼らの姿をみて、幸せのかたちが多様であることを学んだ。
人生の早い時期にそれに気づいたことはそれなりに大きく、私の人格形成に強い影響を及ぼした。その意味でも、『笑ゥせえるすまん』は私のエレメントであり、原点である。

今夜は、心の中の「魔の巣」でグラスをかたむけ、大好きな『ブラック商会変奇郎』でも読みながら、A先生の冥福を祈りたい。

(志木店 スタッフ)

 

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