『ＢＡＮＡＮＡ　ＦＩＳＨ』の吉田秋生による、1983年作品。80年代を舞台に、男子高校生たちの日常を描いた、小学館漫画賞受賞作です。

それまでの作品にみられる、アメリカン・ニューシネマのような殺伐とした感じは一見鳴りをひそめますが、著者特有のひりひりした感じは、80年代的な軽さにくるまれるようにして、そこかしこに感じ取ることができます。
80年代の＜終わりなき日常＞を、閉塞したモラトリアムとして描き出す一方で、それらを楽園に転化し、享受していく気分を象徴するラストシーンも印象深い。混迷の90年代を予見した傑作といえるでしょう。

底辺の男子校というぬるい地獄に通い、何かのタタリのような学園生活を送っていた私にとって、似たような環境でたくましく生きていく男たちのドラマを追体験するのは、苦々しくもすかっとした読後感を得ることができたように思います。それこそ、アメリカン・ニューシネマのような。
本作の陰画ともいうべき連作集『櫻の園』もおすすめです。

(志木店　スタッフ)

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